僕は釣り師だった。 鹿児島には今は埋め立てられて工業団地になったが 七つが島と言うとても美しい浜があった。海岸に 小さな島が点在していて、美しさと共に海水浴や釣り 素潜りのポイントでもあった。ふんどしいっちょうで 潜り、伊勢えびを捕まえてくる名人じいさんもいた。 僕のポリシーは外道だろうがなんだろうが沢山捕る。 素潜りではバケツに何杯も貝を採ったり、漁船では 船一杯ごんずいを捕った。サロマ湖では灯台の下で えさも付けずにカジカの大漁であった。 今回の写真は僕ではない。釣りの写真がないので、 僕のフライフィッシングの師匠に登場願った。カナダ 人のキムである。いかにもらしいでしょ? フライフィッシングもピアノと同じで忍耐である。 師匠はある夏、カナダのサーモンは捕り尽くされた、 今はNZにしかいないと発言し、1ヶ月の釣旅に出た。 NZでは、下流から川を遡り、上流へと魚を求めて登っ て行く。その間ほとんど人に会わない。途中に釣り人 用に小さな小屋が設置されていてそこで食事をしたり 一人寝をするそうだ。その間何千種類も持ってるフラ イをあれこれ試したり自作したり。それが楽しみだ。 毎日サーモンばかり食べるんじゃ嫌にならない? と聞いたら驚くべき返事が来た。「1ヶ月で釣ったサ −モンはわずか3匹」こりゃ、忍耐にも程がある。 NZに魚がいないわけじゃない。フライフィッシング はさほどに難しいとの事であった。NZに行くか?と 誘われたが、そんなの嫌じゃと断った。彼はまだ、行 く気らしい。フライは難しい故に心を掴むのだ。僕 的には心は掴まなくていいから魚を掴めといいたい。 そう言えば、義兄のバイオリン製作者の黒田義雄も 釣きちである。彼も黒鯛の大物狙い。こだわり人間 はそうなる傾向が強いようである |