だったシリーズ6 釣り師


僕は釣り師だった。
鹿児島には今は埋め立てられて工業団地になったが
七つが島と言うとても美しい浜があった。海岸に
小さな島が点在していて、美しさと共に海水浴や釣り
素潜りのポイントでもあった。ふんどしいっちょうで
潜り、伊勢えびを捕まえてくる名人じいさんもいた。
僕のポリシーは外道だろうがなんだろうが沢山捕る。
素潜りではバケツに何杯も貝を採ったり、漁船では
船一杯ごんずいを捕った。サロマ湖では灯台の下で
えさも付けずにカジカの大漁であった。
今回の写真は僕ではない。釣りの写真がないので、
僕のフライフィッシングの師匠に登場願った。カナダ
人のキムである。いかにもらしいでしょ?
フライフィッシングもピアノと同じで忍耐である。
師匠はある夏、カナダのサーモンは捕り尽くされた、
今はNZにしかいないと発言し、1ヶ月の釣旅に出た。
NZでは、下流から川を遡り、上流へと魚を求めて登っ
て行く。その間ほとんど人に会わない。途中に釣り人
用に小さな小屋が設置されていてそこで食事をしたり
一人寝をするそうだ。その間何千種類も持ってるフラ
イをあれこれ試したり自作したり。それが楽しみだ。
毎日サーモンばかり食べるんじゃ嫌にならない?
と聞いたら驚くべき返事が来た。「1ヶ月で釣ったサ
−モンはわずか3匹」こりゃ、忍耐にも程がある。
NZに魚がいないわけじゃない。フライフィッシング
はさほどに難しいとの事であった。NZに行くか?と
誘われたが、そんなの嫌じゃと断った。彼はまだ、行
く気らしい。フライは難しい故に心を掴むのだ。僕
的には心は掴まなくていいから魚を掴めといいたい。
そう言えば、義兄のバイオリン製作者の黒田義雄も
釣きちである。彼も黒鯛の大物狙い。こだわり人間
はそうなる傾向が強いようである

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