僕は雀士だった。 昔の学生は多かったと思うが、学生になれば定番が パチンコ、麻雀、競馬に飲み会。たまにデート。 僕の高校で3年時ずっと一番を通した男が僕の師匠 &雀友である。彼は猿みたいな顔をしていて、頭の いい男に見えない。話す話題も常識的である。だか ら同じ世代の女の子に全くもてなかった。しかし、 もし彼の脳みそを覗く事ができたなら、大抵の女は その才能に酔いしれただろう。僕は酔いしれた。 僕らはしばらく学生麻雀をやっていたが、飽き足ら ず、町に出た。。町の麻雀は真剣勝負である。僕ら はお金がない。だから負けると放り出される。ター ゲットは主として自営業者。彼らはお金を持ってい て自信家。やりやすい。やくざや芸能人、騎手など いろんな人がいた。脅すためか腹巻にたっぷり札束 を押し込んでいる人もいた。この世界はお金を毟ら れる人と奪う人とのせめぎ合いである。 僕らより頭のいいやつもいた。彼らは度胸と緻密な 頭脳があり大抵若い。 この連中に一人で立ち向かうのは勝負としては面白 いが危険である。僕らは組み麻雀を始めた。 話し言葉、パイの置き方、仕草全て細かくサインに なっている。勿論詰め込みもやる。自分で高い手を 上がると疑われるので相方に上がらせる。麻雀放浪 記の世界だが知り合いとはやらない。 彼は大学院を出て就職してしばらくしてこの世を 去った。生きていれば僕の知ってる千億長者の一人 になっていたかも知れない。勿論麻雀で千億長者に なれる事はない。僕も麻雀の世界から去った。だが、 魅惑的で厳しい世界だった。青春の無駄とは言いが たいものがあると思う。 |